国際青少年連合についての日記

国際青少年連合について日本や海外の活動について紹介します。

国際青少年連合 著書「私を引いて行くあなたは誰か」Chapter 4 知恵 その5

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国際青少年連合の設立者であるパク・オクス氏の

著書の紹介「私を引いて行くあなたは誰か」

国際青少年連合 IYF JAPAN9月22日(火)~25日(金)まで

東京代々木の国立オリンピック記念青少年総合センター

ワールドカルチャーキャンプを開催します。

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Chapter 4 知恵 その5

この世で一番の 
将棋名人の家

中国の話です。ある老人がろばに乗ってある町に入った時、
ある家の前に「この世で一番の将棋名人の家」と書かれていました。
それを見た老人が、その門をたたきました。

「ごめんください。」
「どなた様ですか?」
「この世で一番の将棋名人のお宅でしょうか?」
「そうですが。」
若い主人がドアを開けて出てきました。
「何か御用ですか?」
「わしはここから百里ほど離れている村から来たものじゃが、
この世で一番の将棋名人の家と書かれているのを見て、
将棋の相手をしていただきたいと思うてのう。」

すると、その主人が笑いました。
「この世で一番の名人と将棋ですか・・・。」
「だからこそ、ぜひ打たせていただきたい。」

田舎の老人と、この世で将棋が一番だと看板を掲げている若い
主人が将棋盤を置いて向かい合いました。その時老人が言いま
した。

「ただ打つのは面白くないので、何か賭けるのはどうじゃろうか。」
「それもいいですね。何を賭けましょうか?」
「負けたら15両、でいかがかな。」
「そうしましょう。」

ふたりは、将棋を始めました。この世で一番の将棋名人なので、
老人がどんどん攻められていきます。
「王手です。」
結局、老人が負けてしまいました。
「私が負けました。」
「それでは約束通りにお金をください。」

すると、老人が頭をかきながら困りだしました。
「どうしましたか?」
「申し訳ないんじゃが、お金が・・・。」
「えっ、お金もないのに賭けようと言ったんですか?」

若い主人が困っている顔をしていましたが、老人がこのように
提案しました。
「わしが乗ってきたろばを売ったら、50両くらいにはなる。
わしが負けたのじゃから、お金の代わりにろばを受け取ってはくれない
か。」
「それはいけません。遠くから来られたのに、どうやって帰るんですか。」
「それはそうじゃが、約束は約束だ。ろばを受け取ってくれないか。」

老人がかえって主人に頼みました。
「いくらなんでも・・。でも、そうおっしゃるなら、そうしましょう。」
老人は、ろばを若い主人に渡して帰りました。若い主人はろばを受け取り
とても喜びました。若い主人は、ろばの手綱や蔵を新しいものに変え、
体をきれいに洗い、気分がうきうきしました。


それから1週間後、その老人がまた訪ねて来ました。
「どうなさいましたか?」
「この前は約束したお金を払うことができずに、すまなかったのう。
今日はもう一度将棋を打ちに来た。」

「この前は、実力は拝見させていただきましたが、無理ではないで
しょうか。」
「それでも、ぜひもう一度打たせてくれないか。今日はお金も
こうやって用意してきた。」
「そうですか。」
「今度はわしが負けたら、このお金を置いていく。だが、わしが
もし勝ったらろばを帰してもらいたいんじゃが、構わぬか。」

主人は大喜びでした。前回はろばをもらったのに、今日は15両
を置きに来たのかと思うとうれしかったからです。

2人は将棋を始めました。ところが、下手だった老人の実力があがり
若い主人は額に汗がにじみました。老人は大声で言いました。
「それでは、王手。」

この世で一番の将棋の名人が、老人に負けてしまいました。
「私が負けです。」
「では、約束通りにろばを・・・。」
「どうぞ。」

若い主人がろばを引いて来ました。彼は、自分のものになったと
思い、手綱や鞍を新しくし、体もきれいに洗ったので、見ちがえる
ようでした。ろばは飼い主の顔を見て、とても喜びました。

「では、失礼します。」
「あの、ちょっとお待ちください。」
若いしゅじんが帰ろうとする老人を引き止めました。
「お聞きしたいことがあります。」

「何でしょうか?」
「1週間前、なぜ負けて、今日はどうして急に実力が伸びたんです
か?その理由をぜひ知りたいです。」
「そうか。わしがその理由を説明していなかったようじゃな。」


「実は以前話したように、用があってここまで来た。ところが
町の入り口の橋の前に、ろばを連れて町へ入れないと書いてあった。
それで、このろばをどうしたものかと考え、この家の看板を見て
わざとあなたに将棋をまけたのじゃ。しかし、今日は家に帰らねば
ならぬ。それであなたに勝ったのじゃ。」

若い主人は、老人の話を聞いてショックを受けました。自分が
世界で一番将棋がうまいと思っていたのに、その老人は負けたいとき
には負けることができ、勝ちたいときには勝つことができる実力が
あったからです。

彼は恥ずかしく思い、すぐにその看板を下ろしました。そのときから
謙遜になったそうです。


人は自分より優れた人に会うまでは、自分が一番だと思います。
門に看板はつけませんが、『私は頭がいい、他の人より優れて
いる。』という思いを誰もが少しずつ持っています。

 

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